H26.10.23 遺言者より先に、遺言で財産をもらう予定の人が亡くなる場合に備える遺言
遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じません(民法994条1項)。
推定相続人に、「相続させる」とする遺言の場合も、推定相続人が先に死亡した場合は同じです。
ということは、遺言者より先に、財産をもらう人が亡くなった場合、遺言者の法定相続人によって法定相続分で相続、あるいは法定相続人による遺産分割を行うことになります。
この場合、改めて遺言書を作成し直すことが考えられますが、作成しなおす時点で、相当高齢になっていたり、遺言能力がなくなっているなど、遺言を書ける状態にない場合があります。
さらに、公正証書遺言で作成するとなれば、さらなる費用の負担も発生します。
そこで、予備的遺言(補充遺言)を書いておくという方法があります。
万が一、遺言者より先にまたは同時に相続人、受遺者が死亡した場合、他に遺産を渡したい人が決まっているのであれば、予備的に遺言を残しておくことができます。
推定相続人が妻、子、前妻との子である男性の場合の例
男性は、自分が死んだとき、財産は妻に相続させたいと思っている。しかし妻が先に死亡した場合、妻との間の子と前妻との子が相続人になるが、前妻との子には相続させるつもりがない。
そこで、考えられるのが、
「第1条 遺言者はその所有する次の不動産を含むすべての財産を妻大阪花子(昭和00年0月0日生)に相続させる。」
「第2条 万が一、遺言者より前にまたは同時に前記妻大阪花子が死亡していた場合、遺言者は禅譲記載の財産を、遺言者の長男大阪太郎(平成00年0月0日生)に相続させる。」
というような内容です。
遺言者に子がなく、甥に遺贈したい場合の例
子のない遺言者は、推定相続人である兄ではなく、とても世話をしてくれる甥に全財産を遺贈したいと考えているが、先に甥が死亡した場合は、甥の相続人に遺贈したいと考えている。
また、遺言者より先に甥の父親(遺言者の兄)が死亡すれば、甥は推定相続人になるので、その備えもしておきたい。
そこで考えられるのが、
「第1条 遺言者は、遺言者の所有する下記不動産を含むすべての財産を遺言者の甥大阪太郎(昭和00年0月0日生)に遺贈する。
なお、相続開始時において、同人(甥)が相続人になっていたときには、遺贈を相続と読み替え適用する。」
「第2条 遺言者は、前記大阪太郎が遺言者より先に死亡していたときには、本遺言で同人(甥)に遺贈し又は相続させるとした財産を同人の法定相続人に法定相続割合で遺贈する。」
という内容です。