H27.1.23 遺産分割協議だけ終わらせたが相続登記は後回し、の危険
相続人の間で、話し合いもまとまり、遺産分割協議書も作成し、相続人全員の実印、印鑑証明書もそろってひと安心。
これで終わらせてしまう事案が結構あります。
相続登記の相談を受けたら、実はずいぶん以前に遺産分割協議がまとまっていて、相続登記だけを依頼したいというものです。
相続登記自体は、過去に作成された遺産分割協議書があって、相続人の実印押印、押印当時の印鑑証明書があればもちろん可能です。遺産分割協議書作成時の相続人が死亡してしまったとしてもです。
相続登記につかう遺産分割協議書につける相続人の印鑑証明書は、3ヶ月以内などという有効期限はありませんので。
しかし、遺産分割協議書はあるものの、実印がなかったり、印鑑証明書がないなど要件を満たさない場合は、改めて作成する必要があります。
ところで、相続登記を後回しにする危険はないのでしょうか。
相続登記を依頼すると、費用がかかるから、とか、遺産分割協議がまとまったから大丈夫だと思った、など、何らかの事情で登記を後回しにしてしまうこともあるようです。
しかし、不動産の権利は目に見えません。
登記簿に権利を反映させておかないと、他の人に自分の権利を主張できません(対抗力といいます)。
対抗力は早い者勝ちです。登記を先に入れたほうが優位なのです。
相続の場合、相続の権利をもっているのは相続人です。遺産分割協議をまとめても、遺産分割協議にもとづく登記をしないあいだに、遺産をもらわない予定の相続人が法定相続分で相続登記をしてしまうことだってできるのです。
法定相続分で相続登記したうえに、自分の持分を売却したり、担保設定でもいれられてはたまりません。
また、ある相続人の債権者が、代位で相続登記をしたうえで、差押えをしてくることもないとはいえません。
要件を満たさない遺産分割協議書の場合、改めて押印や印鑑証明書を集める必要もありますし、さらに遺産分割協議をしていた相続人が死亡していた場合、相続関係が複雑になることもあるかもしれません。
相続登記は、なるべく早めに進めたほうがいいでしょう。