H27.7.11 親族はいるのに相続人がいないという不思議
相続登記を放置すると、ややこしいことになるといわれる典型的な事案です。
亡くなった方に子がない場合によく見られます。
簡略して説明すると、
相続人というのは、
第1順位が子、第2順位が直系尊属、第3順位が兄弟姉妹で、配偶者は常に相続人です。
亡くなった方に、配偶者がなく、子がなく、両親祖父母などの直系尊属がなく、兄弟姉妹もいない場合は、相続人が不存在となります。
放置された相続登記で見られるのは、たとえば
亡くなったAさん、配偶者、子がいませんでした。
直系尊属は全員死亡しており、Aさんの相続人は兄弟姉妹のBさん、Cさんです。
Bさんにはすでに先立たれた配偶者、子Dさんが一人。
そして、Aさんの死亡後、Bさんが死亡。
Bさんの相続人は子Dさんだけです。
Dさんは未婚で子がいません。
そして、その後、Dさんも死亡。
Dさんの相続人は、いません。
Dさんから見て、Cさんは、おじにあたり親族ですが、相続人ではないのです。
Aさんの相続人は結局、
Cさんと、Dさんの相続人だったのですが、Dさんの相続人がいないことになります。
こういった場合、AさんからCさんへ相続登記をするためには、Dさんの相続人の代わりになる人が必要です。
それが、相続財産管理人です。
相続財産管理人の選任は家庭裁判所に申し立てる必要があります。
CさんとDさんの相続財産管理人との間で遺産分割協議をするなどして相続登記を行うことになります。
ちなみに、法定相続の場合、民法255条で、
「共有者の一人が・・・、死亡して相続人がないときは、その持ち分は、他の共有者に帰属する」とあるので、Dさんの持分はCさんに帰属しそうに思えますが、
最高裁の判例は、
「共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受贈者に対する清算手続が終了したときは、その共有部分は、他の相続財産とともに、法958条の3の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされず、当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、法255条により他の共有者に帰属することになると解すべきである。」
と判示しています。