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相続放棄ができなくなる?熟慮期間経過による法定単純承認とは

1.相続を承認するか、相続を放棄するか

相続人は単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継すると民法に書いてあります。

そして、積極的な単純承認の意思表示がされたわけではないが、第三者からみれば単純承認があったと思われるような一定の行為をしたときには、相続人は単純承認をしたものとみなされるものとされており、法定単純承認といいます。

よく相談があるのが、相続放棄をしたいと考えているが、被相続人の預貯金で葬儀代を払ったが大丈夫か?とか、被相続人が借りていたマンションは解約しても問題ないのか?とか、被相続人が所有している自動車はどうすればいいのか?あとになって借金のあることが判明した。といったものです。

相続の承認、放棄の熟慮期間の経過

民法915条には、

「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならない」と定めます。

熟慮期間の経過とは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に相続の承認も放棄もしなかったときの話です。

被相続人が死亡した日とは限りませんので注意が必要です。

この熟慮期間の起算点は、最高裁昭和59年4月27日判決によれば

原則として相続開始の原因である事実と、自分が相続人になったという事実を知った時ですが、

3ヶ月以内に限定承認や相続放棄をしなかったのが、以下のような事情がある場合は、相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時または、通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当としました。

  • 相続財産がまったく存在しないと信じた
  • そのように信じるについて相当な理由がある
  • 相続人に相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情がある

もっとも、

相続放棄の申述が受理された場合でも、訴訟において放棄無効の主張ができるとした最高裁の判決があり(最高裁昭和29年12月24日判決)、

判旨で「家庭裁判所での相続放棄の受理は一応の公証を意味するにとどまるもので、その前提要件である相続の放棄が有効か無効かの権利関係を終局的に確定するものではない。相続の放棄が有効か無効かというような法律を適用して権利義務の存否を確定するということは、民事訴訟による裁判によってのみ終局的に解決するものと解する」としています。

要は、相続放棄が受理されても、相続債権者はその相続放棄が無効だと争うことが可能なのです。

相続放棄を検討している場合は、トラブルにならないように、基本的には自分が相続人だと知った時から3ヶ月以内という期限をしっかり念頭においていただき、相続財産の調査等で熟慮期間が経過しそうな場合は、必ず熟慮期間の伸長を申し立てることをお勧めします。

熟慮期間経過したあとの相続放棄申述

上記の判例のとおり、熟慮期間が経過していた場合であっても、具体的に承認放棄をしなかった事情があれば相続放棄は可能です。

ただし、通常の相続放棄とは異なり、上記の具様な具体的な事情があったということを家庭裁判所にわかってもらう必要があります。

そこで、熟慮期間経過後の相続放棄申述のときには、

熟慮期間を経過したやむを得ない事情を書いた事情説明書や、債権者からの請求書など新たに相続財産を認識したことのわかる書類などをそろえて、詳しく資料を作成する必要があります。

当事務所にご依頼いただいた場合は、詳しく事情をお伺いし、事情説明書の書き方や、必要な書類収集、家庭裁判所からの照会の回答の方法をしっかりサポートさせていただきます。

正しく事情や主張を家庭裁判所に伝えることができるかどうかで受理されるかどうかが変わることもありますので、このような場合は、司法書士などの専門家に依頼するほうがいいでしょう。

熟慮期間経過後の相続放棄の具体的事例(判例)

最近の裁判例で、熟慮期間経過後の相続放棄申述の具体例を見てみましょう。

遺産分割による相続登記が終わった後に連帯保証債務が発覚

大阪高決平成10年2月9日

遺産分割をして、相続登記が終わった後に、被相続人の連帯保証債務の存在を知ったことを理由に相続放棄をした事案です。

裁判所は、遺産分割は相続財産の処分行為と評価できることから、単純承認事由は認められるものの、以下の理由で、相続放棄の熟慮期間は債務の存在を知った日から起算すべきとしました。

要約すると

「相続人は公庫から相続債務の請求を受け、事情を確認するまでは多額の相続債務の存在を認識しなかったものと認められる。生前の被相続人と相続人らとの生活状況等によると、;相続債務を認識しなかったことについて相当な理由が認められる蓋然性が否定できない。

遺産分割協議がなされているので、法定単純承認事由はあるが、相続人らが多額の相続債務を知っていれば、当初から相続放棄の手続きをとっていたと考えられるし、相続放棄をしなかったのは相続債務の不存在を誤信していたためであり、遺産分割協議についても錯誤無効となり、ひいては法定単純承認事由が発生しないと見る余地もある・・・。」

とし、

3ヶ月以内に相続放棄をしなかったことが、相続債務が存在しないか、相続放棄をするまでもない程度の少額にすぎないものと誤信したためであり、かつそう信じるにつき相当な理由があるとされたのです。

遺言があったために自分は相続財産を承継することがないと信じたが、あとで債務の催告をうけた

東京高決平成12年12月7日

被相続人には遺言がありました。

遺言によれば、長男に全財産を相続させるとなっていたため、自分には財産を承継することはまったくないと信じていたのです。ところが、被相続人の死亡後4年半経過したころに債務の催告を受けたため、相続放棄を行った事案。

裁判所は、

「自らは、被相続人の財産を全く承継することがないと信じ、かつ、このように信じたことについては相当な理由があったのだから、熟慮期間内に単純承認もしくは限定承認、または放棄のいずれかを選択することは期待できなかったのであり、被相続人の死亡の事実を知ったことによっては、いまだ事故のために相続があったことを知ったとは言えない。」

としました。

また、この件では遺言書に不動産の表示が脱落していたため、相続登記の際に遺産分割協議書が作成されていたが、それは

「遺言書を実現するためになしたものであって、自分が相続できることを前提に、長男に相続させる趣旨でさくせいしたものではない」

として、単純承認には当たらないとも判断しています。

相続人が被相続人の預金で仏壇や墓石を購入した後の相続放棄

大阪高決平成14年7月3日

相続人が、被相続人の預金で被相続人の仏壇や墓石を購入しました。その後、死亡してから3年以上経過した後に債務の存在を知り、相続放棄をした事案。

裁判所は、

「預貯金等の財産が残された場合で、相続債務がわからないまま、遺族がその預貯金で仏壇や墓石を購入することは自然な行動である。また、購入した仏壇や墓石が不相当に高額ともいえないうえ、購入費用の不足分を遺族が自己負担していることなどからすると、相続財産の処分に当たるとは断定できない。」

さらに、

「相続人は預貯金のあることは相続開始後まもなく知ったが、債務はないと信じていたのであって、債務があることを知ったのは、信用保証協会からの残高通知書に接したときで、それはやむを得ない。

預貯金以外には財産はなかったのだから、預貯金のほかに多額の債務があることを知っていればすぐに相続放棄をしたはずであるのは明らか。」

と判断しました。

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