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とにかくお金をかけずに作成できるのが自筆証書遺言です。
ところが、ちゃんと残したつもりでも、法律上の様式を満たさないために遺言が無効になることも多いのです。また、様式を満たさない遺言を残すことで相続人がトラブルに巻き込まれることもあり得ます。
何回書き直してもかまいません、自分で遺言を書く場合は、基本的な様式をしっかり押さえる必要があります。
たとえば、遺言は口頭ではいけません。ボイスレコーダーで録音しても、本人の意志は伝わるでしょうが、法律上はだめです。パソコンや、スマホを使って遺言を残すこともだめです。
自分の思いをしっかり残すためにも、その様式はちゃんと守る必要があります。
様式さえきちんと押さえておけば、内容によっては簡単に作成できるのです。
パソコンや、スマホ、ワープロで書いてプリントしたものはダメです。すべての文章を自分の文字で書く必要があります。
どのような内容の文章を書けばよいかという問題はいろいろありますが、まずは、誰に何をあげるのかという文章と、あげる対象のものを正確に記載する必要があるということを忘れないようにしましょう。
書くものはなんでもかまわないのですが、さすがに鉛筆は改ざんされたり、消される恐れがありますので、ボールペンなどがいいでしょう。
書く紙はなんでもかまいません。一般的には便せんでしょうか。
もちろん自分の文字で日付を書きます。
日付はとても重要で、あとになって遺言を書きなおしたり、気が変わって遺言を取り消す場合など、日付の前後が問題になることがあるからです。
たとえば、平成26年1月吉日・・、ではだめなのです。
署名は、自分の名前を書くことです。押印は認め印で構いませんが、実印ならなおいいでしょう。
署名ももちろん、自筆です。自分の名前のゴム印を押すなど、認められませんのでご注意ください。
遺言というと、封筒に「遺言状」などと書いてあって封印されているイメージがありますね。
実は、自筆証書遺言の場合は、封筒に入れて封印がされていなくても無効ではありません。
封筒に入れなくてもいいのです。
もっとも、遺言の改ざんの危険性や、内容を知られてしまうことを考慮し、封筒に入れて、遺言書に押印した印鑑で封印するほうが安心です。
ちなみに、封印された状態の自筆証書遺言は、家庭裁判所で相続人の立会いの下で開封しなければならないことになっていますので、勝手に開けてはいけません。
1.様式をきちんと守って作成できるか
上記のとおり、自筆証書遺言は厳格な様式を満たさなければ無効となってしまいます。
自分で全部書けるか、間違えたらどうするのか、日付を書く場所はどこがいいのか・・・。
そして、肝心の遺言内容は適切に書かれているか・・。
こういった心配ごとをクリアするためには、専門家のアドバイスが必要でしょう。
2.遺言書を書く能力は大丈夫か
民法上は、満15歳になったら遺言をすることができる、と決まっています。
この遺言をすることができる能力のことを遺言能力といいますが、15歳で遺言をすることは、そうそうないでしょう。
問題は、特に高齢者の方で、判断能力が衰えているかどうか疑わしい場合があるということです。
遺言能力を欠いた遺言は無効です。
本人が亡くなり、遺言が発見されたが、遺言を書いた当時、認知症で遺言など書けるような状態ではなかった場合、相続人の間で紛争が起きることがあるのです。
なお、本人に成年後見が開始された場合、本人(成年被後見人)が遺言することができるのは、その能力を一時回復して、医師2人以上の立ち会いが必要です。
当事務所が、自筆証書遺言作成をサポートする場合、ご本人に遺言能力の有無が問題になりそうな場合は、面会はもちろん、医師の診断書によるチェック、ヴォイスレコーダーでの録音など、将来の紛争を予防できるようにサポート致します。
3.遺言が発見されないリスク
当たり前の話ですが、せっかく書いた遺言も発見されなければ意味がありません。
財産をもらう人が遺言の原本を持っていればいいのですが、誰も遺言の原本やコピーを持っておらず、遺言を書いたという話も知らず、肝心の遺言はどこに隠されたのかわからないのではどうにもなりません。
せめて、自分が遺言を書いて、どこに保管してあるということぐらいは親族の人に伝えておくべきでしょう。
もっとも、公正証書遺言の場合は、公証人役場で保管されていますので、紛失の心配はありません。
4.適切な遺言の文章が書けるか
実現可能な遺言の内容になっているかどうかは非常に重要です。
もっともわかりやすい遺言としては、たとえば「全財産を妻誰それに相続させる。」というようなものでよいのですが、相続人が大人数になったり、相続人以外の人に財産をあげたいとか、財産の種類が複雑で、それぞれの財産の特定ができるかどうかという問題もあります。
また、財産を愛犬のポチにあげると言った内容は、愛犬ポチに財産をもらう能力がありませんのでだめです。
遺言内容は自由に考えていいのですが、いざ有効な文章で残すというのは難しいものです。
専門家が、遺言したい内容を聞き取って、有効な文案を作成し、本人が遺言を記載するという方法がよいでしょう。
自筆遺言書を発見した相続人は、家庭裁判所に遺言書を提出してその検認を請求しなければなりません、と民法に書いてあります。
家庭裁判所での検認というのは、その遺言書の形とか、日付、署名などの内容を確認し、偽造や変造を防止するための検証作業のようなものです。
この検認手続によって、遺言が有効か無効かの判断をするものではありません。
しかし、自筆証書遺言で不動産の登記をする場合や、金融機関での相続手続きをおこなうにあたっては、この検認手続を経ることを要求されます。
ところで、この検認手続は、遺言を書いた人の相続人の立ち会いのもとで行われます。
検認手続は家庭裁判所に申し立てるのですが、その際に相続人を調査し、相続人に対し裁判所から連絡が行きます。
たとえば、ある相続人だけに財産を渡したいような場合、他の相続人にも検認の立ち会いの連絡が行くことになり、無用のトラブルを招くことがあります。
その点、公正証書遺言の場合は検認は不要ですから、本人の死亡後、スムーズに遺言の実現が可能です。
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