先日受託した相続登記。
田舎のほうの不動産がたくさんあって、調べてみると、何代も前の方の名義のまま残っていました。
遺産分割協議でまとめて相続しますので、相続登記も何代分もまとめて一括申請します。
登記原因は
「昭和00年00月00日A家督相続昭和00年00月00日B家督相続平成00年00月00日C相続平成00年00月00日相続」
という、なんだかわけのわからないものになります。
戸籍をさかのぼって調べ、相続人は、代襲相続人やら、数次相続も混じって、なおかつ相続人の一人は未成年者で、ややこしいこと。
未成年者の件は、親との利益相反になるので、私が特別代理人として家庭裁判所に選任申立を行い、選ばれました。
これで、遺産分割協議も整い、いざ相続登記を、と思ったところ、たくさんある不動産の中の一つに、登記簿と戸籍をよく見ると、もともとの名義になった登記が無効なものがあることがわかったのです。
もともとの名義人であるBさん。
昭和22年4月1日売買と登記されていました。
Bさんの相続人全員で遺産分割協議をすればよさそうなのですが、
Bさんの戸籍(除籍)をよ〜く確認すると、昭和20年月日不詳満州にて戦死。
と書かれているのです。
その戸籍の記載がされたのは、後の昭和23年のことですが、
Bさんが売買をして登記された昭和22年4月1日には、すでにこの世にはいなかったわけです。
死んだ人が売買の当事者になることはできません。
仮に、亡くなる前に売買をして、あとで登記をしたのであれば登記原因の売買日付が、生前の売買した日付にならないといけません。
なぜ、こんな登記がされてしまったのか。
考えられる原因として依頼者がおっしゃるには、
生前にBが売買をしたが、あとで登記をした。
その際には、B以外の誰かがBの名前で、Bを買主とする登記申請を行い、その売買日付を登記申請の日で登記した。もちろん昭和22年4月1日の時点でBが死亡したという事実はまだ公になっていなかったことも原因。
登記をした人は、戦地から帰ってくるBのために登記をしておいた。
といったところかと。
どのような事実があったのか、どんな経緯でこのような登記がされたのかは、わかりません。
しかし、もともとの登記が無効である以上、このまま相続登記をすることはできません。
法務局にもやはりそう言われました。
で、結局は、その無効な登記を修正しないといけないのですが、
まず当時の売買等の事実確認できるものが何もありません(法務局にも保存されていません)。
事実の確認ができたとしても、登記の修正(所有権更正、抹消)には、前所有者の関与が必要なのですが、前所有者も間違いなく死亡しているでしょうから、前所有者の相続人を探しだして、協力を得なければなりません。
協力が得られなければ、裁判でしょうか。
相続人が誰もいないのであれば、相続財産管理人の選任でしょうか。
事実が確認できるのなら、真正な名義回復というのも検討できるでしょうか。
結局その膨大な労力、時間、手続費用を考えると、断念しようという結果になりました。
相続登記を放置しすぎると、えらいことになる一例です。
たぶん、この登記は永遠にこのまま残っていくのでしょう・・。