私が就任している、ある被後見人Aさんの話。
独居で介護サービスを受けています。
アルツハイマー型認知症で要介護2の方ですが、私が成年後見人として財産管理を行っています。
Aさんは、認知症ですが、毎日外出します。身体はとてもお元気です。
毎日、決まった銀行に行き、キャッシュカードをATMに差し込みます。
すると、画面には、このカードは使えませんので、窓口に来てください、というような表示がされ、キャッシュカードが戻ってきます。
不審に思ったAさんは、窓口に行きます。
窓口では、お金を出すときは、後見人さん(私)と一緒に来てくださいね〜、と伝えると、Aさんは、
ああ、そうやったわ〜と言いながら帰っていきます。
そして、今日銀行に行ったことは忘れます。
毎日、これのくり返しです。
でも、本人はそれで満足するようです。
キャッシュカードをATMに差し込むという行為が、どうやら重要のようです。お金が出せるかどうかは問題ではないようです。お金が出たがどうかはすぐに忘れてしまいますが、キャッシュカードを差し込むという行動は、しっかり昔からの行動パターンに記憶されているようです。
ありがたいと思うのは、銀行の対応です。
もちろん、銀行には事情を説明してありますが、毎日同じ対応をしていただいているのです。
通常、後見人が就任すると、銀行の名義は後見人の名義となり、キャッシュカードも新しくなりますので、従来本人が使っていたキャッシュカードは使えなくなり、銀行はカードを回収することになります。
でも、その銀行は、本人の気持ちや、周りの意見ををくみ取り、今までのキャッシュカードを回収せず、本人に持たせたまま、毎日同じ対応をしてくれているのです。
なんでもかんでも、法律だ、ルールだ、権利だ、義務だ、という風潮が見られるなか、柔軟な対応をしていただけるこの銀行には、本当に感謝しています。
こうした地域のいろいろな人の協力、理解があって、Aさんは生活できるのだと思うのです。